- クラウド会計初めての方必見記事最新税法改正情報経理効率化2022-08-15電子帳簿保存法改正が中小企業に与える影響とは?対応のための3つのポイント2022年1月電子帳簿保存法が改正されました。2年間の猶予期間を設けられてはいますが、遅くとも2024年1月までには例外なく対応することが必要になります。 そこで今回は、電子帳簿保存法の改正で何が変わったのか、中小企業が […]

- 経理効率化
-
公開日:2025.07.08更新日:2025.07.08
経理DXとは?DX化のメリットと実際の効率化事例を徹底解説!
近年、中小企業でも、AIやクラウドなどのデジタル技術を活用し、経理業務の効率化や組織、企業風土を変革する「経理DX(デジタルトランスフォーメーション)」が急速に進んでいます。
紙ベースの処理や属人的なノウハウに依存した従来の経理業務は、多くの企業が限界を感じつつあります。
そこで、本記事では、
・なぜ経理業務のDX化が求められているのか
・導入によって得られる具体的なメリット
・実際の経理DX化成功事例
・経理DX化に向けたステップと注意点
について解説していきます。
そもそも 経理DXとは?IT化との違いは?
経理DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して経理業務そのものや組織を変革し、業務効率化や生産性向上を図る取り組みを言います。
経理DXとIT化は、どちらもデジタル技術を活用して業務を改善する取り組みですが、その目的と範囲に大きな違いがあります。
IT化とは
IT化とは、主に既存の業務プロセスを効率化、デジタルで代替化することを目的としています。今まで手作業やアナログで行っていたことをデジタルに置き換えることで、時間短縮やコスト削減、ヒューマンエラーの削減などを目指します。
例えば、
・紙の請求書を電子化して、保管スペースを削減する
・会計ソフトを導入し、手書きの帳簿を廃止する
といったイメージです。
IT化は、あくまで現在の業務フローの中で、特定の作業をより早く、正確に行うための手段です。
経理DXとは
一方、経理DXは、デジタル技術を活用して、経理業務そのものや組織、ひいては企業のビジネスモデルを根本から変革し、新たな価値を創造することを目的としています。
単なる効率化にとどまらず、経理部門がより戦略的な役割を担えるようにすることを目指します。
例えば、
・AIを活用した自動仕訳システムを導入し、経理担当者の定型業務を削減。別の業務に時間を割いていただく
・クラウド会計と銀行口座、販売管理システムなどを連携させ、リアルタイムで経営数値がわかる仕組みを整え、成長投資やコスト削減などの経営判断を迅速に進める
といったイメージです。
DX化は、IT化によって得られる効率化を土台としつつも、その先に組織やビジネスの変革を見据えているのが違いです。
経理業務のDX化が求められる3つの理由
近年では、電子帳簿保存法などの法改正や、時代とともに変化する経営環境、人材事情などの問題から、旧来のやり方では立ち行かなくなってきています。
人材不足の深刻化:少人数でも効率よく経理を行う体制構築が急務
既に経営者の皆様も実感されていることかと思いますが、少子高齢化の進行と共に、深刻な人手不足が顕在化してきています。
特に中小企業では、経理担当者の採用に苦戦しており、一人の担当者が多くの業務を抱えている状況が常態化しています。
事業が成長しても、経理担当者が1人で、または経営者様や奥様、ご親族の方が残業しながら進めていることも多いのではないでしょうか。
こうした状況下で業務を維持するためには、限られた人員でも高いパフォーマンスを発揮できる体制の構築が急務です。
その解決策の一つが、経理DXです。
法改正や「2025年の崖」問題:法令順守や制度対応、国からの後押し
2022年の電子帳簿保存法改正や2023年10月に開始されたインボイス制度といった制度改正が経理部門に大きな影響を与えています。
これまで紙で保管されていた帳簿・書類が、電子保存を基本とする流れへと転換されつつあり、法令順守のためには業務システムの見直しが必須となっています。
加えて、インボイス制度では適格請求書発行事業者の管理が求められ、従来のアナログな体制では対応が難しくなっています。
こうした制度改正に柔軟に対応するためにも、経理DXの推進が急務となっています。
また、経済産業省が2018年に公表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」では、「DX化が進まないと、爆発的に増えていくデータを活用しきれず、デジタル競争の敗者になる」「DX化が進まないと、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生する」、など所謂「2025年の崖」問題が指摘されています。
国もこれらを後押しするため、「IT導入補助金」や「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」などの補助金事業をおこなっています。
国が後押ししている施策については、上手く流れに乗っていく必要性があるでしょう。
激しい経営環境の変化:迅速な経営判断を行うための材料
近年、生成AIの台頭や技術革新、予期せぬパンデミックや地政学リスクの高まり、物価上昇、賃上げの動きなど、経営を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。
様々なコストが増加している中で利益を出し、成長し続けるためには、DX化に取り組み利益構造の転換を図ることが避けられません。
・固定費や変動費の変化により、知らぬ間に赤字体質になっていないか?
・事業別・商品別の利益率の違いから、今後の注力分野は何か?
・適正な人件費率になっているか?人件費率が高いのに採用や賃上げに動いてしまっていないか?
適切な経営判断を迅速に行うためには、正しい試算表や事業別・商品別損益計算書の確認が必須でしょう。
経理業務をDX化する5つのメリット
経理業務のDX化は、単なるIT導入にとどまらず、経営全体の質を向上させる力を持っています。
メリット①:業務効率化・人材不足対策
経理DXを進めることで、人手不足でも経理部門を効率よく回すことが可能となります。
仕訳や請求書管理、経費精算、給与計算など手動で進めていたものを自動化することで、経理部門の手を空けることができます。
中小企業の場合、経理部門の人員が、総務労務も兼務しているケースも少なくありません。経理DXによって空いた時間に、採用・総務・マーケティングなど、企業成長に直結する別の業務に充てていただくことも可能になります。
メリット②:経営状況がリアルタイムでわかる
デジタルツールを活用し、経理DXを進めることで、企業の財務情報がリアルタイムで把握できるようになります。
従来は四半期ごとにしか見られなかった数字も、DX化された環境下では日次・週次・月次での可視化が可能となり、経営判断のスピードと精度が格段に高まります。
また、グラフやダッシュボードによる視覚的な表示もできるようになり、関係者への説明のしやすさも大きく改善することでしょう。
メリット③:郵送コスト、人件費削減
経理DXの導入は、書類の印刷コストや郵送コスト、ファイリングにかかるスペースなどの物理的な経費を大幅に削減します。
また、人の手で行っていた業務の多くが自動化されることで、業務時間の短縮を実現し、残業費削減など人件費の見直しも可能になります。
これは特に中小企業において、固定費の最適化に直結する重要な効果といえるでしょう。
メリット④:属人化の解消
業務の手順や判断基準をシステムに組み込むことで、属人性の排除も可能となるでしょう。
これまでは「経理担当者の〇〇さんしかわからない」といったブラックボックス化されていた状況も、経理DXを進める過程で一度業務フローの洗い出しや見直しを行うため、解消されます。
担当者が異動・退職したとしても回る仕組みになり、組織としての持続可能性も高まります。
メリット⑤:働き方改革の推進、労働環境の改善
リモートワークやフレックスタイム制度といった柔軟な働き方を支える基盤としても、経理DXは有効です。
クラウドベースのシステムを活用することで、物理的な出社を前提としない働き方が可能となり、ワークライフバランスの実現や人材定着にも好影響を与えます。
従業員が働きやすい環境作りは、定着力や採用力にも直結するでしょう。
経理DX導入による成功事例
ここでは、実際に経理DXを行い、高効率かつ柔軟な経理体制を構築したT社様の事例をご紹介します。
Before:アナログな経理体制のため、試算表の作成に30日かかり、適切な決算対策が打てなかった
若手社員を中心に順調に売上伸ばしているT社では、これまで創業時からお付き合いのあった地元の税理士事務所に依頼をしていましたが、「クラウド会計は正確性に欠ける」と否定され、導入に踏み切ることができませんでした。
当時の経理体制は、通帳をスキャンして資料を共有する、勤怠管理はエクセルで管理する、給与計算は給与明細を印刷して手渡しするといった、アナログな体制のままでした。
そのため、試算表の作成に30日以上かかっており、決算対策もできないまま終わる状況でした。
After:会計・勤怠・給与計算・経費精算をクラウド化し、経理部門を再構築!決算2ヶ月前に対策を打てるようになり、融資枠&取引する金融機関を増やせるように!
そこで、経理のクラウド化や経理改善が得意な税理士に変更し、経理周りのDX化を進めることに成功しました。
・クラウド会計の導入:通帳のスキャンが不要に!PCやスマートフォンを使えば、いつでもどこでも経営情報にアクセスできるようになり、意思決定のスピードと正確性が大きく向上!
・クラウド勤怠の導入:エクセルでの計算が不要に!自動集計で手作業ゼロ!計算ミスゼロ!
・クラウド給与の導入:自動計算で負担減!給与明細を印刷する手間が減り、メールで従業員に給与明細が届くように!
・クラウド経費の導入:現金精算から、従業員がスマホで経費申請できるように!給与と合算して支払いできるようになり、経理の手間が減少!
これらの経理部門再構築により、試算表の作成が30日→15日に短縮でき、決算2ヶ月前には、銀行評価を見据えた決算着の検討、納税予測をもとに節税対策の検討ができるようになりました。
その結果、銀行から高評価を得られるようになり、融資枠を増やしていただいたり、取引する金融機関を増やすことができ、事業の成長スピードを加速できました。
経理DXを進めたことで、組織や業績に大きな変革を与えた好事例と言えるでしょう。
経理業務のDX化を進める5つのステップ
DXを成功させるためには、いきなりシステムを導入するのではなく、段階を踏んで社内整備を進めることが重要です。
経理のDX化のステップ①:業務の棚卸をする
まず必要なのは、自社の経理業務がどのように構成されているかを可視化することです。
普段経理が進めている業務の一覧や手順、担当者、使用ツールを細かく洗い出すことで、ボトルネックや非効率な工程を特定できます。
この工程を怠ると、システムの選定や運用が現場に合わず、導入の失敗につながります
経理のDX化のステップ②:課題発見・解決方法の分析
業務フローを把握した後は、どこに課題があるのかを明確にします。
例えば、「昔からの慣習で、別々のシステムに二重で入力している部分」や「手動でやらなくても自動化できる部分」が見つかるでしょう。
これらに対して、どのようなツールや仕組みで解決できるかを検討していきます。
経理のDX化のステップ③:システムの自動化・仕組化
課題に応じて、最適なクラウドツールやソフトウェアを選定し、業務の自動化・標準化を図ります。
導入前には十分なトライアルやテスト導入を行い、現場の業務フローに合致しているかを検証しましょう。
並行して、手順書やマニュアルを整備し、誰が見ても対応できる土台を整えておくと導入がスムーズでしょう。
経理のDX化のステップ④:現場担当者への説明、導入フォロー
どれだけ優れたシステムであっても、使うのは現場の人間です。
担当者にとって使いやすく、負担にならない導入を実現するために、丁寧な説明と導入初期のフォローが必須です。
現場の人間が使いこなせないと、導入した意味がありません。
その為、現場からのフィードバックを受けながら都度修正・改善を加えることで、定着と活用を促進しましょう。
経理のDX化のステップ⑤:成果分析・横展開・拡大
導入後は、どの業務がどの程度効率化されたのか、実際の工数(業務にかかった時間)やコスト削減効果などをできれば定量的に分析しましょう。
また、まずは一部の業務を同様にDX化し、成功すればその他にDX化できる課題はないかを確認し、拡げていくとよいでしょう。
複数の部署がある場合は、まずは試しに一部の部署だけ導入し、成功した進め方を他部署やグループ会社へ横展開することで、スムーズなDX推進化ができます。
経理業務のDX化を進める上での注意点
経理DXは一見すると華やかな変革に見えますが、成功させるためにはいくつかの注意点があります。
シンプルで使いやすいツール、アフターサポートもしてもらえるツールを導入する
複雑な機能が多数搭載されているツールでも、現場で使いこなせなければ意味がありません。
インターフェースが直感的で操作が容易なものを選ぶことで、定着率を高めることができるでしょう。
加えて、導入後のサポート体制が整っているかどうかも選定の重要な要素です。
専門の外部パートナーを活用する
DXを推進するには、クラウドツールやITに関する一定の知見を持つ人材の存在が不可欠です。社内の若手に依頼するのも一つですが、企業のDX化を進めるにはまた違った知識・経験が必要です。
経理DXを成功させるためには、専門的な知識と現場感覚の両方を持つ支援者の存在が欠かせません。
そのため、様々な企業の経理DX化を進めてきた外部パートナーを活用するのも一つでしょう。経営者自身がITに強くないといった場合は、担当者のサポートをすることも難しいため、特に外部パートナーを活用するとよいでしょう。
税理士事務所によっては、経理改善やDX化が得意な事務所もあり、業務設計から導入、運用まで包括的にサポートを受けられます。
日々の会計・経理のサポートをしてもらえる税理士事務所だからこそ、一貫して相談できると効率的でしょう。
経理のDX化については、まずは税理士に相談してみることをおすすめします。
経理DXに強い税理士をお探しなら船井総合研究所へ
本記事では、経理業務のDXの必要性やメリット、成功事例、導入に向けたステップと注意点について解説しました。
自社だけでDX化を進めようとすると、失敗することが多いのが実情です。
そこで、船井総合研究所では、経理業務の効率化やDX化支援に精通した優良税理士を紹介しています。単なるシステム導入にとどまらず、業務全体・企業全体の最適化を目指している経営者様、経理業務のDX化を検討されている経営者様は、お気軽にお問い合わせください。
-
-
坂田 知加会計事務所向けコンサルティングに従事し、全社において女性最速・最年少で管理職に昇進。これまで全国300以上の会計事務所に関与。「企業レベルと税理士レベルのミスマッチ」を解決したいという想いより、現在は成長企業とハイレベル会計事務所のマッチングを行っている。