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公開日:2023.08.29更新日:2023.09.05
キャッシュフロー経営とは|見るべきポイントやメリット・デメリット、進め方をわかりやすく解説!
キャッシュフロー経営とは、「売上や利益ではなく、手元に残る現金の増加を追求する」経営手法です。一般的には「キャッシュフローを重視した経営」や「キャッシュフローの最大化」などのフレーズを耳にしますが、実際に具体的な方法がどのようなものなのか理解しづらいこともあります。ここでは、キャッシュフロー経営の要点やメリット・デメリット、実践方法について、解説していきます。
キャッシュフローとは
キャッシュフローとは、企業のある一定期間において実際に現金が出入りする状況を指します。具体的には、売上や支出、投資活動などによって生じる現金の流れを示します。このキャッシュフローは、経営者が企業の財務状態を把握し、資金の適切な管理を行うための重要な指標となります。
3タイプのキャッシュフロー
キャッシュフローは大きく分けて、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つのタイプに分類されます。それぞれのタイプは、企業の異なる活動や資金の動きを示す役割を果たしています。以下で見るべきポイントについて詳しく説明していきます。
営業キャッシュフロー
営業キャッシュフローは、企業の本業である営業活動から得られる現金の流れを表します。売上や仕入れ、給与支払いなどが含まれ、これらの活動が企業の現金状況にどのような影響を与えているかを示す重要な指標です。
営業キャッシュフローは本業の稼ぎを示しています。そのため、もし現在営業キャッシュフローがマイナスになっている場合は、「売上は立っていても、利益が出ない商品・サービスになっている」「現金を回収できていない」「経費が多い」といった状況となっており、注意が必要です。マイナスが続くと、黒字倒産の懸念が出てくる他、企業の信用力も低下する恐れがあります。
基本的に成長企業は営業キャッシュフローがプラスとなっています。その金額は大きければ多いほどよいでしょう。
投資キャッシュフロー
投資キャッシュフローは、企業が資産を取得・売却することによって生じる現金の流れを示します。新しい設備の導入や事業拡大のための投資が含まれ、基本的に投資した金額が多いとマイナスに、売却した金額が多いとプラスになります。
投資キャッシュフローは、会社がどのような投資活動に力を入れているのかわかる指標となっており、
数値がマイナスでも将来への前向きな投資であれば全く問題ありません。
一方、プラスの場合は、将来の投資よりも会社の資産売却が上回っている状態なので、事業の縮小や資金繰りの悪化を懸念されます。
財務キャッシュフロー
財務キャッシュフローは、資金調達や返済など、企業の財務戦略に関わる現金の流れを表します。株式の発行や借入金の増減などが含まれ、企業の資金状況にどのような影響を与えるかを示す指標です。
どのように資金を調達し、返済しているかを表しており、プラスの場合は、金融機関などから資金調達を積極的に行っていることがわかります。マイナスの場合は、返済や配当金の支払いが調達した資金を上回っており、借入金の返済が滞りなく進んでいる状態です。
一般的に、
営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナスとなっている企業は、本業で稼げており、成長への投資を行いながら借入金も返済できている優良企業と判断できます。
一方、営業キャッシュフローがマイナスにもかかわらず、財務キャッシュフローもマイナスの場合は、注意が必要です。業績が悪いにも関わらず、資金調達ができていない可能性があります。
これらのキャッシュフローは他のキャッシュフローとのバランスを見ながら確認・分析していきましょう。
キャッシュフロー経営とは
上記で解説したように、キャッシュフローは会社の現状を正しく把握するのに役立ちます。
得た利益と実際の手元の現金を把握することで、問題を早期発見し、黒字倒産を防ぐことができます。
キャッシュ(現金)に焦点を当てた経営
キャッシュフロー経営では、債権回収や仕入れ時など、現金の動きごとに経営判断を行います。この方法を採用することで、キャッシュフローの動向や現金不足に迅速に気づくことができ、事業の安定的な継続を確保することが可能です。また、企業の倒産リスクを回避するためにも、キャッシュフローを適切に確保することが重要です。
キャッシュフローを意識出来ていない経営の場合、多くの経営者様が「頭の中の勘」を働かせ資金の流れをシミュレーションしています。しかし、企業規模の拡大が進むにつれて、経営者の勘の精度が下がってくるケースが多いです。弊社のお客様でここにずれが生じてくるのは、企業規模が5億円を超えて10億円規模に向かうタイミングが非常に多いと感じます。
企業の業績が良い間は問題なく資金繰りを回していくことができても、業況が悪化した場合、資金の流れが見えていない中で膨らんだ借入の返済をしていかなければいけない、ということに注意をしていかなければいけません。
売上重視との違い
売上を重視した経営では、商品の販売などによって売掛金が発生したタイミングで収益を計上します。ただし、売掛金の回収までは現金が入ってこないため、実際の現金残高は増加しません。また、売上だけを追ってしまうと、利益がどれぐらい残っているかを把握できえていないケースも散見されます。
その結果、「売上は伸びているが、利益率は下がっていた」「利益はあるが現金が足りない」という状況が生まれ、最悪の場合、黒字倒産に繋がる可能性が考えられます。
利益重視との違い
利益志向の経営も、一見問題なさそうに見えますが、現金回収に時間差が生じる場合、利益は出ていても製造コストが利益を上回る場合、キャッシュが不足する可能性があります。
利益が手元に戻ってくるより、製造コストの支払いが先に来てしまうと、資金ショートが発生する危険があるのです。
キャッシュフロー経営が必要な理由
ここでは、キャッシュフロー経営が必要な理由について解説します。自社のキャッシュフローを把握することで、黒字倒産を防ぎ大規模な設備投資に対しても備えることができます。以下で詳しく説明していきます。
黒字倒産の防止
キャッシュフロー経営の必要性は、最終的に残る実際の資金額を明確にし、経営上のリスクを評価し、安定性を確保するためです。利益があるにも関わらず、資金不足によって倒産してしまう「黒字倒産」を回避するためにも、現金重視のアプローチは不可欠です。
もちろん、売上の拡大を考えることも肝要であり、売上がなければ企業の成長は望めません。ただし、実際に手元に資金がなければ支払いに支障が生じ、事業運営自体が難しくなることもあります。特に、取引が掛け値で行われる企業においては、売上はあっても即座にキャッシュが入るわけではありません。この売上から入金までのタイムラグにより、計画上の数字と実際の現金残高に差異が生じ、必要な支出に対応できなくなることがあります。
大規模投資への備え
仕入れや設備投資など、大規模な支出を行う企業であっても、キャッシュフロー経営は重要です。利益が多くても、支出が増加すれば資金不足の危険性が高まります。また、これらの投資が将来的にキャッシュを生み出す仕組みに適切に結びついているかを評価することも大切です。
キャッシュフロー経営のメリット
キャッシュフロー経営によって享受できるメリットはどのようなものがあるのでしょうか。キャッシュフロー経営の代表的な3つのメリットについて、以下で詳しく説明していきます。
1.経営判断の選択肢が増える
キャッシュフロー経営によって、経営判断の選択肢が増えるというメリットが得られます。キャッシュフロー経営は、企業の成長に向けた資金確保にも貢献します。新規事業の展開や事業拡大に伴う設備投資や人材獲得には膨大な資金が要求されます。十分な資金を持っていれば、選択肢が広がりますが、資金が制約されると経営方針の自由度が制限されることもあります。キャッシュフローの適切な管理によって、企業の成長のチャンスを最大限に活かす意思決定が可能となります。
2.対外的な信用度が上がる
キャッシュフロー経営によって適切な資金を保有することで、資金ショートのリスクを軽減し、企業の信用力を向上させることができます。例えば、設備投資や事業拡大のために大規模な資金調達が必要になるケースがあります。この際、金融機関からの融資が必要となるかもしれませんが、キャッシュフロー経営に基づいてキャッシュフロー計画や資金繰り表を提示することで、資金調達の正当性を説明できます。また、支払いの滞りが少ないため、取引先からの信頼も高まります。
3.過剰投資や資金ショートを防ぎ、経営が安定する
キャッシュフロー経営には、過剰投資や資金ショートを防ぎ、経営の安定性を確保する利点があります。事業運営には仕入れ、給与、税金などの支払いが欠かせません。適切なキャッシュフローの確保は、必要な運転資金を確実に用意する手段となります。売掛金の回収が難しい状況でも、キャッシュフロー経営の恩恵によって資金ショートのリスクを軽減できます。
キャッシュフロー経営のデメリット
キャッシュフロー経営には、デメリットも存在します。
インフレ時は不利になることも
キャッシュフロー経営は、インフレ時には不利になることもあります。キャッシュフロー経営では、手元現金の確保を重視するため、インフレの状況下では現金の価値が下がり資産が目減りするという側面もあります。そのため、キャッシュフロー経営に固執するのではなく、自社の経営状況を総合的に勘案して意思決定を行うことが重要と言えるでしょう。
キャッシュフロー経営の進め方
キャッシュフロー経営を導入するには、現状の把握と改善が欠かせません。以下では、キャッシュフロー経営の実践手順について詳しく説明していきます。
1.キャッシュフローの現状を把握する
最初に、現在のキャッシュフロー状況を把握することから始めましょう。キャッシュフロー計算書や資金繰り表を用いて、現金の収支を詳細に分析します。営業活動、投資、財務活動の各キャッシュフローを過去3期分のデータを元に検証し、傾向を理解します。
2.今後のキャッシュフロー計画を作成する
現状分析が完了したら、目標となるキャッシュフロー計画を立てます。月単位での計画を策定し、定期的に評価・調整を行いながら改善策を練っていきます。なお、中小企業にはキャッシュフロー計算書の提出義務はありませんが、実効的なキャッシュフロー経営のためには作成が不可欠です。
目標となるキャッシュフロー計画が策定されたら、その実現のために改善策を実施します。キャッシュフロー改善の基本は、「入金サイクルを短縮し、支払いサイクルを延長する」ことです。取引先との協力や交渉を通じて実現可能な方法を検討しましょう。
また、売掛金の回収は厳格な管理を行い、支払期限を守らない場合には速やかに催促することが重要です。時間が経過するほど回収は難しくなります。
在庫の最適化や経費の削減にも取り組み、「不要な資金」を減らし、支出をコントロールすることでキャッシュフローを改善できます。さらに、支払いサイクルを延ばすためにクレジットカードを活用する方法も一つの選択肢です。
キャッシュフロー改善を顧問税理士に提案してもらえていますか?
本記事では、キャッシュフロー経営の概要やメリット・デメリット、実際のキャッシュフロー経営の進め方について解説しました。キャッシュフローを意識した経営を取り入れることで、資金繰りの安定化や財務の改善が期待できます。
変化の激しい経営環境でも持続的に成長していくためには、キャッシュフロー経営を取り入れることをおすすめします。
もし自社だけでキャッシュフロー経営を構築することが難しい場合は、専門の税理士に依頼することで解決できます。
税理士事務所によってはキャッシュフロー表の作成やキャッシュフロー表をもとに打ち合わせをすることが可能です。キャッシュフロー改善に強い税理士に相談することで、企業の財務状況を専門的な視点から評価し、最適な提案をしてくれます。
現在の顧問税理士からキャッシュフローに関して十分なアドバイスを受けられていない場合、顧問税理士の変更を検討することも選択肢の1つです。
船井総合研究所・「税理士セレクション」では、キャッシュフロー経営に強い税理士をはじめとして、成長意欲の高い中小企業の様々なニーズを満たすハイレベル税理士を紹介しています。
ぜひお気軽にご相談ください。
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石原 佑哉
新卒で船井総研へ入社以来、HR領域のコンサルティングで全国各地・様々な業種の企業の成長支援を行ってきた。
その中で成長企業ほど会計周りの業務効率化や決算・税理士に関する悩みが多かったことから、”企業レベルと税理士レベルのミスマッチを解決する”という事業コンセプトに共感し、成長企業とハイレベル会計事務所をマッチングする税理士セレクション事業のメンバーとして活動している。
現在は多くの業種のコンサルティングに携わった知見を活かし、業種・企業規模に応じた課題を解決するべく、年間200件以上のご相談に対応している。