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公開日:2023.05.09更新日:2023.05.17
経理で自動化できる業務とは?経理を効率化するためのサービスやポイント
経理業務の自動化は、近年注目されているトピックスの1つです。その背景にはAIやRPAといった業務自動化ツールの台頭が挙げられます。
経理業務を中心とするバックオフィス業務をターゲットとした、さまざまな自動化ツールが開発されています。
本記事では、経理で自動化できる業務や、効率化するためのサービスやポイントについて紹介していきます。経理業務の効率化を検討している経営者様は、ぜひ参考にしてみてください。
中小企業でよく見られる経理の課題
経理業務の自動化を考える前に、まずは中小企業でよく見られる経理の課題について紹介します。経理業務が非効率となる原因を知り、自動化によって解決できる部分はないか検討しましょう。以下で詳しく説明していきます。
業務が属人化している
経理業務は、直接的には利益をもたらさない補助間接部門であるため、人員を最小限としている企業も少なくありません。少数精鋭の限られた人員、もしくは一人の担当者が全ての業務を担っている場合もあります。そのため、担当者の経験や知識による独自の方法で業務が行われていることも少なくありません。このような場合だと、外部からは業務の内容や問題点が分かりづらく、改善のメスが入りづらくなってしまいます。
紙帳票によるアナログな運用が多い
経理業務は、取り扱う書類が非常に多いため、全ての帳票を紙で運用・管理していると非効率になります。請求書の発行を例にあげても、「請求データをシステムに入力」「請求書を印刷」「印鑑を押印」「取引先へ送付」「請求書の売掛金を会計ソフトに入力」という極めて繁雑な作業があります。日々発生する紙帳票によるルーティンワークが、経理業務の効率化を妨げている一つの要因となっている場合もあります。
経理で自動化できる業務
ここでは、経理で自動化できる業務について解説します。経理業務は定型作業が多いため、AIやRPAによる自動化ツールと親和性が高いです。以下で詳しく説明していきます。
仕訳の自動入力
経理で自動化できる業務には、仕訳の自動入力が挙げられます。近年ではクラウド会計を中心に搭載されている機能です。インターネットバンキングやクレジットカードなどの各種サービスから、明細データを会計ソフトへ自動連携することで、クラウド会計ソフトに搭載されているAIが自動で勘定科目を分類してくれます。仕訳の自動入力を活用することで、手入力で仕訳登録を行う必要がなくなり、経理業務を図ることができます。
請求書発行と入金消込作業
請求書発行と入金消込作業もシステムを活用することで業務の一部を自動化することができます。特に請求書発行は多くの部分で自動化処理が進んでいます。請求書のやり取りをPDF等のデータの授受で行えるようになれば、押印や郵送業務を省略できて経理担当者の業務負担を大幅に減らすことができます。
また、請求書の発行後の売掛金管理業務、入金消込作業においても自動化が進んでいます。従来の入金消込作業では、人の目によって入金情報と請求情報の突合作業を行っていたため、多くの時間と労力を必要としていました。入金消込作業を「自動で」行ってくれるクラウドソフト(クラウド会計ソフト・クラウド請求書発行ソフト)を導入することで自動化が可能となります。
経費精算処理
経費精算は全従業員に関係する業務であるため、自動化によって多くの人が恩恵を受けることができます。全社的な作業時間の削減効果も大きいため、自動化ツールの導入効果が高い業務であると言えます。そのため、自動化ツールを提供する各社においてもシステム開発が盛んに行われています。
例えば、交通費の精算を経路検索や交通系ICカードとシステムを連携させると、自動で運賃の算出や定期区間の排除した交通費の算出が可能となります。また、クラウドソフトを導入し、アプリをスマートフォンに導入してレシートを撮影すると、申請内容を自動で作成してくれてそのまま申請まですることが可能です。紙での経費申請が不要となり、申請者も承認者も楽に経費精算処理を行うことが可能です。クラウド経費精算ソフトとクラウド会計ソフトは連携できるため、承認された経費内容がそのままクラウド会計ソフトに自動連携されます。
経費精算システムは、会計システムと比較して導入ハードルが低いため、経理業務の自動化に際しては経費精算システムから取り入れる企業も多いです。
経理で自動化できない業務
現時点で自動化できている経理業務は、定型業務の一部です。
そこで、ここでは、経理で自動化できない業務について解説します。
クラウドシステムを活用する経理体制構築と、イレギュラーな業務パターンの対応に関しては、現時点では人の介在が必要です。しかし、今後AIがさらに進展してくると、人がオペレーションの役割を担う事も不要となってくるかもしれません。
クラウドシステムを活用する経理体制構築
経理で自動化できない業務には、クラウドシステムを活用する経理体制構築が挙げられます。自動化ツールの導入により多くの作業を自動化することは可能ですが、システム間の連携設計など、全体設計の構築においては人の介在は欠かせません。
イレギュラーな業務
経理で自動化できない業務には、イレギュラーな業務が挙げられます。自動化ツールが得意とするのは定型業務であり、複合的な情報を分析・判断する必要があるイレギュラーな業務には対応できません。このような複雑な判断が必要な業務は、現時点では人の介在が欠かせませんが、AIなどの発展により今後はイレギュラー業務の判断も機械が担う可能性はゼロではありません。
経理を自動化する3つのメリット
ここでは、経理を自動化する3つのメリットについて解説します。経理を自動化することで、日々の経理業務にどのような効果が表れるのでしょうか。以下で詳しく説明していきます。
時間的なコストの減少
経理の自動化には、時間的なコストの減少というメリットがあります。仕訳入力の自動化で、経理担当者の業務負担を大幅に削減できます。また、これまでは人の目による突合作業が必要であった入金消込処理も自動化すれば、経理担当者は定型業務から解放され、人の介在が必要なイレギュラー対応や確認・判断・分析等の業務のみに注力することができます。
紙や印刷のコストの減少
経理の自動化には、紙や印刷のコストの減少というメリットがあります。経理業務の自動化・システム化によって、書類の発送や請求書の作成などにかかるコストが削減できます。また、紙管理からデータ管理へ移行することによって売上や立替経費の金額が一目で分かるようになります。これに伴い、社内における承認作業も簡素化され、迅速な業務遂行が可能となります。
人的ミスの減少
経理の自動化には、人的のミスの減少が挙げられます。自動化ツールの導入により、仕訳登録や請求書発行が自動で行われるため、これらの業務に関して発生する人的ミスが減少します。自動化以前の経理業務では、大量の領収書を表計算ソフトに入力して管理する必要があったため、経理担当者の負担が大きくミスの温床となっていました。経理業務の自動化によりこれらの作業から開放されるので、単純作業ではなく判断が求められる仕事に集中することができるようになります。
経理を自動化するサービス一覧
ここでは、経理を自動化するサービス一覧について解説します。経理自動化システムの導入を実際に検討する場合、様々な種類から選定する必要があります。以下で詳しく説明していきます。
クラウド会計システム
クラウド会計は、日々の会計処理を記録し、帳簿書類を作成するためのシステムです。
インターネットバンキングやクレジットカードとデータ連携を行うことで、入出金データから取引登録を自動で行えます。また、取引内容を蓄積していくことで、仕訳も自動化することができます。 中小企業であれば、経費精算・電子請求書発行も対応できるMoney Forward(マネーフォワード)やfreee(フリー)を使っている企業が多いです。
経費精算システム
経費精算システムは、経費精算処理を電子化するシステムです。交通費・経費・出張費・支払請求など、さまざまな処理を電子化することで、作業の手間や人的ミスを大幅に削減できます。また、電子化によって情報の共有や経理遂行状況の確認などもスムーズに行うことができます。 Money Forwardやjinjer(ジンジャー)、楽々精算、TeamSpirit(チームスピリット)等を活用している中小企業が多いです。
電子帳票発行システム
電子帳票発行システムは、各種帳票の電子化を推進するシステムです。紙で郵送していた請求書や支払明細といった帳票の電子化が可能です。請求データや支払データをシステムに取込むだけで、電子請求書や電子支払い明細書の発行が可能となるため、請求書の作成や郵送作業の手間が大幅に削減されます。こちらはMoney Forwardやfreeeでも対応できますが、楽々明細やBtoBプラットフォームを利用する企業が多いです。
請求書管理システム・入金消込システム
請求書管理システムとは、請求書や見積書の作成・送付や入金などの管理業務を効率化するサービスです。また、それに関連して
売掛金などにおける入金消込業務を自動化する入金消込サービスもあります。請求書などの売上・請求データをもとに、請求内容と対応する入金の突合を自動で行ってくれます。請求書の入金確認などの手間を削減することで、経理業務の効率化が期待できます。
こちらもMoney Forwardやfreeeでも対応できます。その他、楽々明細、board、Bill One(ビルワン)、v-one(ブイワン)、飲食店の場合はBtoBプラットフォームが多くなっています。
給与明細システム
給与明細システムは、勤怠情報や従業員情報から自動で給与額などを計算・作成し、従業員に送付することができるシステムです。Money Forwardやfreeeと連携することで一括で管理することも可能になります。
このように様々なシステムが存在しますが、
・現在使用している販売管理などの基幹システムと連携ができるか
・会計ソフトとの互換性はどうか
を考慮して、ソフトを選ぶことをおすすめします。
経理を自動化するポイント
ここでは、経理を自動化するポイントについて解説します。経理業務の自動化には多くのメリットがありますが、導入に当たってはいくつか気を付けるべきことがあります。以下で詳しく説明していきます。
業務の可視化が不可欠
経理業務の自動化を進める上では、現状の経理業務の業務内容をしっかり可視化することが必要です。まずは現状の業務フローや各段階での業務内容、具体的な作業工程などを、フローチャート等で可視化しましょう。業務の可視化が十分でない場合、経理業務全体の中で自動化を進めるべき部分はどこか、適切な自動化システムの選定、自動化に対応した業務フローの変更などの全体設計がうまくいかず、かえって効率が悪くなったり、業務の重複が生じたりするなどの不具合が生じる場合があります。
導入時の設定や導入前後の運用はプロと一緒に進める
※上記はイメージです。
経理業務の自動化システムの導入は、導入すれば終わり、ということはありません。自動化システムを活用するためには、周辺ツールとのデータ連携設定(API連携)や、自動仕訳が機能するような初期設定が重要です。また、自動仕訳機能を例にとりますと、新たな取引が生じたときや非定型的な取引等は、常に自動仕訳ルールの更新が求められます。AIの判断間違いをチェックしてAIの精度を向上させ続ける作業も必要です。
自社だけでやろうとすると、そういったAIのミス対応で躓くかもしれません。
ですが、経理業務の自動化やシステム導入に長けた税理士と一緒に進めることで、スムーズな運用を行うことができます。独自開発の基幹システムがない場合は、システム導入のコンサル会社に頼むより、互換性・操作性・システム周りに精通している税理士事務所に頼んだ方が安くスムーズに依頼できることもあります。積極的に税理士を活用しましょう。
経理担当者のスキルを高める
経理作業を自動化することにより、定型的なルーティン作業はシステムが行ってくれるようになりますが、その分、経理担当者の方にはより正しい経理判断をしてもらうこと、従来の作業から解放される分、財務的な業務に従事してもらうことが理想です。
こちらも税理士と一緒に進め、経理担当者にも知識をつけてもらうことをおすすめします。
経理業務の自動化を効率的に進めるために
ここでは、経理業務の自動化を効率的に進めるために行うべきことを紹介します。次のポイントを踏まえて自動化を進めることで、より経理業務の効率化が図れるでしょう。以下で詳しく説明していきます。
経営者がやると決める
経理業務の自動化を進める上では、意識改革も重要なポイントです。経理業務が非効率となっている組織の担当者や経営者には、現状のままでも問題がないと考えている場合が多く、自動化ツールの導入に伴う作業方法の変化や導入の手間を敬遠する傾向にあります。また、通常業務が集中している経理担当者は、多忙であることを理由に非協力的なケースも少なくありません。
経理業務の自動化が会社にとって重要であることを、経営者と経理担当者全員が理解することが大切です。様々な現場を見てきたプロの力を借りながら、経営者が先頭に立って自動化を進める会社は上手く進むことが多いです。一方、自社だけでやろうとする会社、現場任せになっている会社は失敗する傾向にあります。まずは、経営者がやると決めて、現場を引っ張っていきましょう。
ミスを防止・カバーできる環境を作る
経理業務は自動化を進めたとしても、ヒューマンエラーを完全に無くすことはできません。重要なのは、ミスをゼロにすることではなく、ミスを未然に防ぎカバーできる環境を作ることです。また、ミスが発生した際に過度に追及する環境では、ミスの隠蔽が発生しやすくなります。ミスを迅速に報告できるような信頼関係を普段から築くよう、管理職に対して指導していくようにしましょう。
プロの力を借りる
これまで何度か述べてきましたが、自社だけで経理の自動化を進めようとすると途中で頓挫することが多いです。経理に強い人材を採用するのも手ですが、人材獲得競争が激化する中、優秀な経理を採用できる確率は低いでしょう。
そこで、外部の力を上手く使いながら進めることをお勧めします。
会計事務所の中には経理の自動化導入支援を行っている事務所もあります。現在の顧問税理士が経理の自動化に対応できない場合は、他の会計事務所も検討してみましょう。
まとめ
本記事では、経理で自動化できる業務や、効率化するためのサービスやポイントについて紹介していきました。経理業務は定型作業が多いため、自動化ツールと親和性が高いです。自社にとって最適なツールを比較検討し、経理業務の業務負担の削減に取り組みましょう。また、自動化ツールの導入だけではなく、必要に応じてプロの力を借りることも、有効な選択肢の1つです。
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石原 佑哉
新卒で船井総研へ入社以来、HR領域のコンサルティングで全国各地・様々な業種の企業の成長支援を行ってきた。
その中で成長企業ほど会計周りの業務効率化や決算・税理士に関する悩みが多かったことから、”企業レベルと税理士レベルのミスマッチを解決する”という事業コンセプトに共感し、成長企業とハイレベル会計事務所をマッチングする税理士セレクション事業のメンバーとして活動している。
現在は多くの業種のコンサルティングに携わった知見を活かし、業種・企業規模に応じた課題を解決するべく、年間200件以上のご相談に対応している。